従業員の解雇
雇用した従業員に問題がある場合でも、簡単に解雇することはできません。
まずは、従業員に対して退職勧奨をすることになるでしょうが、退職勧奨のやり方がマズいと裁判所に退職勧奨そのものが違法であると判断されてしまうこともあります。
また、従業員が退職勧奨に応じない場合にはもっと厄介です。就業規則上の懲戒解雇理由に該当するとしても、それだけでは不十分です。客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる場合にはじめて解雇が有効となります。
例えば、能力不足の従業員を解雇したい場合、まずは、他の部署に異動させて別の業務に従事させます。異動先でも能力を発揮できない場合、更に別の部署に異動させて…ということを繰り返し、どの部署でも能力を発揮できずに、もう与える仕事がないという状況まで作り出しておく必要があります。
また、勤務態度が悪い従業員を解雇したい場合であっても、一発解雇は相当ハードルが高いです。戒告、出勤停止、減給、降格といった具合に軽い処分から徐々に重い処分を科していき、最終的に懲戒解雇にもっていく必要があります。
もちろん、解雇後に訴えられることを覚悟して懲戒解雇に踏み切るという経営判断も考えられます。たとえば、10人解雇して、そのうち不当解雇で訴えてくるのが1人であれば、トータルでみればペイするという考え方です。
しかしながら、インターネットが発達した現代社会においては、従業員側も、「懲戒解雇が正当なものなのかどうか」を容易に検索できる時代ですので、一昔前よりも訴えられる可能性は高くなっています。法律、判例法理に則った処理をしておいた方が無難であることは間違いないので、従業員を解雇しようとする場合には事前に弁護士に相談しておいた方がよいと思います。