利益を出しても金が残らない理由
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▼ 決算書ではわからない金の流れ
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“勘定合って銭足らず”という言葉を聞いたことがあるだろうか?これは主にコロナ前の多くの中小企業の状況を表した言葉である。勘定合ってというのは利益が出ているのに、という事、つまり利益が出ているのに金が足りないという会社が数多く存在しているのだ。
実際に東京商工リサーチが出しているデータによると倒産している会社のうち約半数は黒字倒産、つまり会計上利益が出ていたのに倒産していたのだ。では何故倒産してしまったのか?前回のコラムでもその点については触れているが会社は赤字で倒産するわけではない。金が無くなると倒産するのだ。
つまり、会計上は利益が出ている状態なのに資金ショート、つまり金が無くなって倒産しているのだ。
何故利益が出ているのに現預金残高が増えないのか?
この金の流れについて理解できていますか?当然本業で赤字という状態であれば手許の金もどんどん減っていき、黒字であれば増えていくというのは基本的な理解としては間違っていないが、会計上の利益というのは金の流れという事を考えるにあたっての1要素でしかないという事だ。つまりそれが全てではないという事。
ちなみに売上という点で考えると金の流れとは更にかけ離れているので売上が増えてるのに金が増えてない、何故だ?という状況では相当まずい。今すぐ財務について、会社の金の流れについて勉強する必要がある。
では売上が現預金残高の増減と関係ないのは前提としても利益が出ても金が減ってしまうのは何故なのか?
それは、決算書、つまり損益計算書上には出てこない金の出し入れが沢山ある事が要因である。例えば年間100万円の売上があって経費がゼロだった場合税金は無視すると会計上の利益は100万円となるがその売上代金を回収していなければ売掛金が100万円増えただけで現預金の増加はゼロになる。
それらの現預金の増減などを細かく計算している決算書としてキャッシュ・フロー計算書というものがあるがかなり難解で完璧に理解するのは正直難しいし経営者がキャッシュ・フロー計算書の読み方を理解する必要はあまりないと考えている。
実際私自身は公認会計士として上場企業等の決算書を監査する立場として働いていたので当然キャッシュ・フロー計算書についても熟知しているが、それでも人に分かりやすく説明するのは難しいし、自分よりも簡単にキャッシュ・フロー計算書を説明することが出来る人はいない。と公言していた先生の説明を理解している私が聞いても分かりにくい。と思ったぐらいなので恐らくキャッシュ・フロー計算書について素人でも分かるように簡単に説明できる人はこの世に存在していない。
という状況なのでキャッシュ・フロー計算書について完璧に理解するという事はお勧めしないがだからと言って金の流れを理解しなくてよいか、というと当然そんなことは無い。
では、金の流れについて理解する必要がないかというと当然そんなことは無い。なので簡易的に金の流れ(増減)を算定する方法として下記の計算式を自社の決算書に当てはめて計算してみて欲しい。これで大まかな金の流れはわかるはずだ。
経常利益-法人税等+減価償却費-借入金元本返済額
多額の積立型の保険などに加入している場合には下記の計算式で計算する
(当期純利益+減価償却費)-(借入金元本返済額+保険の資産計上額)(現金損益®)
この計算式で何をしているか、というと損益計算書上の利益に金が出ていかない費用である減価償却費をプラスし、金は出ていくけど費用にならないものをマイナスしている。この2つの要素が損益計算書上の利益と金の流れが一致しない要因で、その中でも特に影響の大きい減価償却費と借入金の元本返済額を調整しているという事である。
この計算式さえ押さえておけばひとまず金の流れが全く理解できないという状態は避けられるはずなのでまずはこの計算式で自社の資金繰りの状況を把握してみて欲しい。その結果が大きくマイナスになっているという事であれば改善しなければいずれ資金ショートしてしまう可能性が高いという状態になってしまっている。改善方法についてはまた別の機会にお伝えする。
上記の計算式で大まかな金の流れはわかるようになるがやはり理想としては全ての会社が資金繰り表ぐらいは作成するべきである。最初は作成するのに時間がかかるかもしれないが慣れてしまえば大したことはない。資金繰り表さえあれば金の流れについては完璧にわかるようになる。会社が継続・存続し続ける上で最も重要な金を後回しにする理由はないはずだ。忙しいとかめんどくさいとかそんなことを言っている場合ではないはずだ。優先順位を間違えないように気を付けて欲しい。
もし、数字は苦手だし顧問税理士に任せてるから大丈夫、自分は見ない。というような状態になっているとしたらあまりにも危険だ。経営者には従業員やその家族の生活を支えるという責任を果たす必要もある。会社を経営しているのは顧問税理士ではなく経営者自身であるという事は決して忘れてはいけない。